宮本 彰

株式会社キングジム
代表取締役社長兼CEO
Biography

キングジム代表取締役社長兼CEO。創業家に生まれ、慶應義塾大学卒業後、1992年に4代目社長に就任。開発力を強みに「テプラ」「ポメラ」などのヒット商品を生み出す。またM&Aを進めコロナ禍では家具、キッチン家電衛生用品などが伸び、歴代最高益記録を更新する。

昭和初期に祖父が創業したキングジムは、ファイルメーカーとして確固たる実績を築きながら、デジタル文具や生活用品など商品展開を広げてきました。その中で、2008年に発売されたデジタルメモ「ポメラ」は、会社を代表するヒット商品となり、2023年には発売15周年を記念した特別モデルも販売されました。しかし、「ポメラ」はもともと商品化会議でボツになりかけた経緯があります。商品化を最終決定する開発会議には、私を含めた役員全員が出席します。「ポメラ」は文字入力に特化し、ネット接続ができないにもかかわらず3万円近い価格設定でした。このため、ほとんどの出席者が「売れるはずがない」と否定的でした。しかし、たった一人、社外取締役である大学教授が「素晴らしい商品だ」と評価したことで流れが変わります。この意見をもとに半信半疑で商品化に踏み切ったところ、予想を超える売上を記録しました。

会議で10人中9人が反対する商品は通常ボツになりますが、少数意見を活かすことで新たな可能性が開けます。例えば、日本の人口1億2千万人のうち10分の1、1200万人に届けば大ヒットです。「ポメラ」はまさにその一例で、多数決では実現できなかった商品です。多数決は便利ですが、ヒット商品は生まれにくく、むしろ無難で売れない商品が増えがちです。一部の人に深く刺さる商品を目指すことが重要で、「ポメラ」のような熱心な愛用者を持つ商品が理想です。支持者が多くなくても、絶対的に支持される商品を作ることが成功の鍵だと感じています。

「ポメラ」の魅力はシンプルさにあります。電源を入れるとわずか2秒で文字入力が可能。パソコンのようにウイルスチェックを待つ必要もありません。作業が終わればボタン一つで保存と終了が完結します。ネット接続機能をあえて省いたことで、シンプルさと利便性が際立ちました。当社は最先端技術を競う企業ではないため、大手とは異なるアプローチで隙間産業に特化しています。「ポメラ」の年間売上は数億円規模ですが、大手が参入しにくい市場で安定的な収益を確保しています。こうした隙間商品を複数展開することで、総合的な利益を積み上げる戦略を採用しています。私は社長に就任して30年以上になります。上場企業として株主、社員、取引先を幸せにするために、業績を右肩上がりにしなくてはなりません。それと同時に、環境問題に貢献する商品を開発し、社会に良い影響を与えたいという夢も抱いています。大きな挑戦ではありますが、その理想に向けて努力を続けていきたいと考えています。

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